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東京大学教授

山名 淳さん

インタビュー

OB/OGの声

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教育学系コースで得た人間関係が今の仕事の基礎に
東京大学教授 山名淳さん

昭和57年教育学部教育学科(現教育学系コース)入学
昭和61年大学院教育学研究科博士課程前期入学
昭和63年大学院教育学研究科博士課程後期進学
主な著書に、『ドイツ田園教育舎研究―「田園」型寄宿制学校の秩序形成』風間書房・2000年
『夢幻のドイツ田園都市―教育共同体ヘレラウの挑戦』ミネルヴァ書房・2006年
『教育人間論のルーマン―人間は“教育”できるのか』勁草書房・2004年(共編著)がある。

※ このインタビューは前職の東京学芸大学在職時に行われました。

国際シンポジウムでの山名淳さん(中央)。
奥はエアランゲン大学教授ショインプフルーク氏、手前はヴァインガーテン教育大学教授ラング=ヴォイタージク氏。

Q.

今のお仕事について教えてください。

A.

東京学芸大学で教育学を担当しています。大学院では教育哲学を、学部では国際教育を担当しています。
大学院では新しく入ってくる5人の学生を、もう一人の教育哲学担当の先生と指導することになります。

Q.

お仕事の中で楽しいことは何でしょうか?

A.

研究の中で人と関わりあえることです。学部時代は英語やドイツ語を十分に勉強したわけではありませんでした。

みんなとは遅れて、大学院に入ってからドイツ語を熱心に勉強しました。

留学経験などを通して書くドイツ語から話すドイツ語へと変わった時に、それを使ってコミュニケーションが広がっていくことをたいへん嬉しく感じました。

指導していた学生との繋がりもあります。前任の大学の学生とも、今も連絡をとりあっています。

Q.

教育学系コースではどのような学生時代を過ごされましたか?

A.

学部時代は回り道ばかりしていたような気がします。大学での勉強は重要ですし、面白かったのですが、大学に入ってからはいろんなものが目新しく、そういったものへのショックの方が大きかったです(笑)。


 そのとき、いろいろ失敗しましたが、それが今の糧となっている気がします。学部時代はいわば学校的な人間だったので、枠があれば枠の中ではうまくやっていけるところがあったのですが、枠が無くなったときにうまくやっていけるスキルが無かったのでしょう。ですから、今から考えるといろいろと間違いをおかしているし、その間違いから学んだことが多いと思います。


 さらにショックを受けたのは留学ですよね。留学して、もう一度枠がはずれて、お金は無い、ステイタスは無い、言葉は通じないという中で、アイデンティティクライシスのようなものを経験しました。そういった枠の無い中で、どうやって生きていくかに向き合わざるを得なかった、そういう経験が今も大きいのではないかと思います。


 教教(教育学系コースの前身)での友人たちとの繋がりは今でも大切だと思います。研究以外の面で自分を振り返った時、大学時代の友人との繋がりを今でも懐かしく思い出します。友人との繋がりが自分の原点だったのかもしれません。今ある私の基礎を作ったと言えるでしょうか。

Q.

今の進路を決めたきっかけは何でしょうか?

A.

学部時代は教員になるということが到達点で、そのためにいろいろと積み重ねているんだという気持ちでした。

4年生になった時に、教員採用試験を受けるかどうかで悩んで、結局、もう2年勉強してから考えようと思って大学院に進学することにしました。
大学院に入って、研究者を目指そうとすぐに思ったわけではないのですが。教育哲学という領域には魅力的な毒みたいなものがあって、それにあたってしまうと苦しいんだけど離れられないというところがあると思うんです。マスターの2年間でそれに十分あたったかなと思います。

Q.

最後に今の教育学系コースに何かメッセージをお願いします。

A.

僕がいた東千田町のキャンパスと今のキャンパスはずいぶん違います。

カフェも出来て、環境やアーキテクチャとして見るとすごく恵まれていると思います。その反面、昔の千田町はいい意味でも悪い意味でもごちゃごちゃしていて、その人間形成力は大きかったのだと思います。

今のキャンパスからはそうしたごちゃごちゃした部分は抜け落ちてしまいましたが、この環境をうまく使うことを考えてみてもらいたいと思います。


 もう一つ、大学院や留学を終わって上から見た感じでしか言えませんが、自分の安全圏、つまり枠の中にとどまらないでほしいと思います。自分の安全圏とそこから離れたとても危ない場所があるのだと思います。すごく危ないところに行けとは言えませんが、自分が安全だと思っている場所の少し先には自分を変えるチャンスがあるのだと思います。そういう自分の枠を越えることへのチャレンジをぜひ試みてほしいと思います。

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